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 雪は、ようやく降るのをやめ、空を隠していた重々しい雲も風に流されていく。  途切れ途切れに見える空に、オレンジの光が差していた。  雪が降り積もった町を行く人の数は、普段の半分以下。元々、それほど人口の多くない町だから、ポツリポツリとしかいない。  買い物袋を抱えたアクアは、ご機嫌だった。 「タスク、あと何?」  アクアの好きな、白い手袋とチョコレート色のコート。 「あとは~……あ、パンとヨーグルトと牛乳」 「朝メシ?ジャック?ジャックに行く?」  ジャックは、商店街を抜けてすぐ、家から、歩いて五分の場所にある食品店。主な売り物は手作りパンで、店の扉を開けると、芳ばしく仄かに甘い香りが、鼻と食欲を刺激する。 「そう、ジャックに行って終わり」  二人とも、耳も頬も寒さで真っ赤になっていた。  雪道を家へと歩けば、アクアが着るコートと同じ、チョコレート色をした店「ジャック」が見えてくる。  店先で、靴についた雪を払い、扉を引く。  扉についていた大きな鈴が、カランと音を立てた。  店内は、外観とは反対にとても明るい。 「こんにちはぁ~」     
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