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「カナちゃんは?」
「ん~?習い事じゃなかったら遊べる~。明日聞いてみよ」
アクアに笑顔が戻った。
タスクが、ほっとして、笑みを浮かべた――――直後だった。
「アクア」
ぼんやりと、そして訝しげに名前を呼ぶ。
「……あ」
アクアも、気付いて声を上げた。
「アクアが見てたの、あの人だよな?」
「うん」
「さっきまで、ジャックにいたよな?」
「うん。普通に店の中見てたよ」
二人は足を止め、数メートル先の街灯の下を見ていた。
「えっと、あれは、倒れてる……?」
タスクの言葉は、疑問符で終わった。
「たぶん……そう見える……」
「だよな?」
二人の視線の先に、男が一人。
黒い髪に黒い服、雪のように白い肌が覗く。
アクアが玄関先で見かけ、先ほど、ジャックでも見かけた男。今、街灯の柱に寄り掛かるようにして、地面に足を投げ出して座り込んでいた。
積もった雪のせいで、いつもより少しだけ白く明るい通りに、黒い姿はよく映えた。
二人は、そっと男に近づいた。
恐る恐る、顔色を窺う。
「あの……」
タスクが、覗き込んで声をかけてみる。
俯いていた男は、瞳だけタスクへと向けた。
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