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他人の家族の、何ということのない姿に思い知らされる―――自分には、「それ」がない。自覚して、多少なりとも傷ついている自分も、アクアは好きじゃなかった。  しゃがみ込み、足元の雪を両手でかき集めて雪玉を作る。アクアは、それを、胸の内のモヤモヤを消し去るように、思い切り遠くへと投げた。  そして、大きく息を吐く。 「よしっ。かぁえろ」  家まではもう少し。今日は、せっかく「おかえり」を言ってくれる人が待っているのだから。それから、作りたてのおやつも。  アクアの足取りは、再び軽くなった。  商店街から続く住宅の密集区。その中に、アクアの家もある。  周りと同じオレンジの屋根、クリーム色の外壁、周囲とは違う、紺色の玄関扉。通りに面していて、扉の上には、大きく張り出した軒がある。どの家にも、似たような長さの軒があり、途切れ途切れに続いていた。  アクアは、家を目の前にして、再び足を止めた。     
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