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 途中までは、もっと楽しかった筈なのに、と、アクアは軽く口を尖らせた。 「おかえりぃ」  キッチンダイニングの方から聞こえてきた声。  アクアは、楽しみにしていたこと思い出して、パッと顔を輝かせた。  コートもマフラーもつけたままで、キッチンへ走る。甘い甘い匂いのする、キッチンへ。  入って左奥の、扉のない部屋が、リビングだった。  左手側にキッチンダイニングが広がる。そこで、二十歳の男がケーキを作っていた。 「タスク、ただいまっ!」  嬉しそうに頬を緩めて、アクアは、キッチンに立つ同居人・タスクに抱きついた。 「おっと……」  タスクは、腕に抱えていたクリームの入ったボールを、庇うように上げた。  アクアと同じ琥珀の瞳と、同色のツンツン立った短い髪。無駄な肉のない、引き締まった体をし、そこそこ背丈もある。
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