1

8/10
前へ
/101ページ
次へ
タスクは、アクアにとって叔父に当たる。 「あ、ちょっ、アクア!びしょ濡れ……?傘は?持っていったろ?」 「あるよ、ここ」  アクアは、持っていたカバンをタスクに見せるように顔の高さに掲げた。  カバンの隅から、折りたたみ傘の持ち手が覗いていた。 「あるなら差して帰って来いよ。それから、とりあえず離れろ」 「やだ。ねぇ、今日のおやつ何ぃ?」 「ショートケーキ。食べたかったら、着替えて来いよ?」 「うん」  素直に頷いて、タスクから離れる。  アクアは、自室へ向かいながら、マフラーを外した。  アクアの部屋は、リビングのすぐ隣。  リビングから直接通じる部屋の扉を開ける前に、アクアはタスクを振り返った。 「タスク、今日お客さんあったの?」 「ねぇよ。何?」 「玄関のとこに、人がいたよ?」 「どんな?」 「えっとねぇ……」  男の姿を説明しようとして、アクアは、眉を潜めた。 「あれ?」  全く思い出せない。  つい数分前に見かけた人なのに、欠片も覚えてなかった。 「忘れたみたい……。でも、いたんだよ、ホントに」 「なんだ、そりゃ」  タスクは、わけがわからないと、アクアを見つめた。 「あれ~?」  呟きながら、アクアは自室へ入った。     
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加