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カバンをベッドへ放り投げて、扉の右にあるラックに、上着をかける。制服を着替えながら、アクアは、もう一度、男の事を思い出してみた。
「玄関のことにいて、邪魔だなぁ、って思ったのに」
やはり、思い出せることはなかった。
リビングに戻ると、タスクの作ったケーキが、テーブルの上で甘い匂いを漂わせていた。
「紅茶はミルク?」
タスクが、ポットとカップを運びながら訊いた。
「うん。手を洗ってくる」
窓の外は、まだ、雪が降り続いている。
キッチンで手を洗うアクアは、さっと済ませてタオルを取った。水が凍るように冷たかった。
「アクア、早過ぎ。ちゃんと洗わなきゃダメだろ?」
「冷たいんだもん」
すぐ後ろにいたタスクを見上げて、誤魔化すように笑う。
「もう一回洗ってから」
「はーい」
叱られても、ニコニコと笑っているアクア。
タスクは、自分に言われた通りに手を洗い直してからテーブルにつくアクアを、目で追った。
「(甘えてる?)」
原因なら、確信はないが、すぐに思いつく。
「アクア、遊びに出る前に、課題、少しは片してけよ?」
遠回りに答えを探る。
「遊びに行かないよ。課題、リビングでしてもいい?」
アクアの意識は、甘い甘いケーキに向いている。
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