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依頼人の来訪
大家が文句を垂れながら出て行った後、弥佐暮は煎餅布団をしまって来客態勢を整える。しかし、大雑把に書類をどかしただけで、相変わらずのごった返した事務所。とても人を招き入れるような空間ではないのだが、当人はそれで片付けが済んだと思っている。
やがて、鉄製のドアが軽くノックされた。
開けようとするも、なかなか開かない。
「もっと強く。体当たりするぐらいの勢いで」
「ええ」
ドアの向こうから戸惑う女の声。「いいからいいから」と促す弥佐暮に応えて、女は思いきりドアに体当たりをした。蝶番の悲鳴が事務所に反響し、ヤニ臭い上に埃っぽい事務所の散らかった様相が、女の視界に。
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