脅迫状

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 パニック状態の里佳子をなだめながら聞き出した住所。それをたどり、里佳子の住むマンションへとたどり着く。エントランスに並ぶ郵便受けの中にぐしゃぐしゃになった紙が、何枚も何枚も詰め込まれて、溢れているものがあるのが目に入る。何枚かは、入りきらずに地面に散乱していた。それが里佳子が恐れを抱いたものだと弥佐暮は、瞬時に理解した。  ほどなくして、顔面蒼白の里佳子がエントランスに降りて来た。 「弥佐暮さん、郵便受け見ましたか。さっき見たら、こうなっていて」 「見させてください」  震える手で郵便受けのダイヤルを回す里佳子。開けると、雪崩が起きて詰め込まれていた紙がばらばらと落ちた。拾い上げると、里佳子の震えが、弥佐暮にもうつるようだった。  おどろおどろしい字体で書かれた、「かごめかごめ」の歌詞。紫音の机の中から見つかったものと同じものだ。それが、何枚も何枚も。 「これは……祟りですか。あの()が私を、恨んで呪っているんですか」 「――筆跡が似ていますね」  弥佐暮は確信を持った。郵便受けに詰め込まれたものと、紫音の机に入っていたものを書いた主は同じ。 「落ち着いてください。死人が文をしたためることは、ありません。おどろおどろしい字体は、おそらく、筆跡を誤魔化すためのもの。これは何者かがあなたを怖がらせるために作った脅迫状です」
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