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外からはジージー、と蝉の鳴き声が聞こえてくる。プリーツスカートにぶっきらぼうに手を突っ込み、ポケットから可愛らしいキャラクターを模したキーホルダーの付いた鍵を取り出した。 がちゃ。 鍵を回して、扉に手をかける。あまりに外が暑かったから俊敏な動きなんてしたくなかったが、蚊が家に侵入してくるのが嫌で勢いよく閉めた。うるさい程耳に刺さった虫の音も、それと同時に遠のいた。 靴を脱ぎ、かばんを肩から下ろしながら足早に階段を上る。自室の扉を開けるとむわっとした熱気に包まれてしまい、思わず顔をしかめる。それを振り払うように窓をガラリと開け放ち、呼吸を整える。 ここまでが、私の日課。学校から帰ってくれば、大抵は私が一番最初に家に着くことになる。先に親でも居れば、そんな慌てて落ち着きのない子だね、なんて苦笑されていたかもしれないが。
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