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開放された窓から外を眺める。私の家は少し高いところに建っているから、ここからは周辺地域が眺望できる。
ふう、とまた深呼吸をする。さっき布団に放り投げたままのかばんを起こしてチャックに手をかけた。ジィ、と大きな音をたてるこのかばんを、私はあまり気に入っていなかった。中を見ないまま手探りで課題用のノートを2冊取り出す。それから金色のチャームがぶら下がった布製のペンケースもかばんから引っこ抜いた。
ふと、顔を上げて、視界から少し外れてしまった窓に目をやった。
空はまだ青く、白い雲がよく映える。きっと公園からだろう、小学生が虫を相手にはしゃぐ声が響く。用水路に貯まった水の流れる音が心地いい。
いつしか忘れていた蝉の声が、またうるさく耳に入ってきていることに気付く。こんな声を聞くだけでも、夏が来たんだな、と思わせるにはじゅうぶんだ。
ぺら、と手にしたノートをめくる。
依然開いた窓に付けられたカーテンが揺れる音が聞こえる。蝉の音はうるさい程に聞こえる。後ろからは、ギシギシと関節を鳴らす音が聞こえる。ビチャ、と液体の垂れる音が聞こえる。ハー、ハー、と荒い呼吸音が聞こえる。二チャ、と肉を引き摺る音が聞こえる。ガリガリと爪をたてる音が聞こえる。
今年も夏が来たな。私はこの音を聞くと、そう毎年感じている。
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