手袋。

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あれはもう今から十年くらい前のことなんだけどさ。 俺はその頃30を目前にしてはいたものの、すでに結婚し子育てに追われる日々でもあった。 それでもやはりまだ俺自身としては若いつもりでね。やっぱまだ遊びたいってそんな気持ちも残ってたんだよな。 当然入籍する前からの趣味、その幾つかは削らざるをえなかったけど、それでも大事なものだけは細々続けていた。 スノーボードもそんな趣味の中の一つ。 若い頃は散々行ったスノボーも、今じゃ二ヶ月に一回。それもいつもソロプレイかー。 まぁちと淋しいけど、周りの連中もみんなだいたい落ち着いた。ソロとはいえ遊べるだけマシか。 そんなことを漠然と思いながらリフトに揺られ山頂へ。 真冬の頃はウェアを着込んでいても寒さが堪えたもんだが、今はもう初春。天気さえ良ければ寒くねえな。 そう独り言を呟きながらスノボーをセットし、顔を上げる。 「・・・おお。」 遠く遥か遠くに見える山々はまるでコーヒーゼリーのミルクかけのよう。 雲一つない晴天をバックにしたコーヒーゼリーは雄大で美しかったのを今でも覚えている。
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