手袋。

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気を取り直し、ボードをブーツに装着したままほんの少しだけジャンプ。 うん。久々のスノボーとはいえ身体はまだ忘れてないな。 全身各部位の動きを確認しながらまずは試走。 なんなく一本を滑り終え、そしてまたリフトに乗り、滑走。 それを繰り返すこと五回くらいだったかな。 六回目のリフトに乗っている時に俺は眼下数メートル下の雪上に落ちる赤い手袋に気がついた。 あれ?さっきリフト乗った時はあんなの落ちてたっけ? そう思い、記憶を辿るが定かではない。 リフト上で振り返り、もう一度見ようと思ったがすでに小さな赤い点にしか見えなくなってしまっていた。 そういえば、あの赤い手袋が落ちていた場所。 あそこ、自分で勝手に開拓したマイ林間コースの近くだな。 昼飯休憩終えたらチャレンジがてら行ってみるかー。 まずは昼飯前に、マイ林間コースのルート確認。 本来許可されてない、コース外を勝手に滑るのだ。慎重に慎重を重ねるくらいで調度いい。 幾つかのコブを越え、細木の合間を抜け、枝をしゃがみ滑りで回避し、やがて俺はリフトの真下についた。 あの赤い手袋が落ちていた場所はこのリフト沿いに少し滑りにくい細々とした細木の多い林を抜けた先だろう。 よし、まずは腹ごしらえだな。 ついついこのまま行きたい欲求にかられるも、振り払い、ロッジへと俺は滑り降りた。
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