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「あ、ありがとう・・。 でも、それ依千歌のだから私は、いいよ。 それに、別の注文するから気にしないで、ハハハ・・・」
私の目の前に置かれた『鶏もも肉のバジル焼き』を依千歌の目の前に置きなおした。
自分の手元にもどってきた『鶏もも肉のバジル焼き』のお皿を依千歌は、恵梨に奪われないように、ガッチリと掴んで、一口食べた。
「ご注文は、お決まりですかぁ?」
と、私と恵梨の間にホール担当の女の子が笑顔で注文をききにきた。
「・・・じゃあ、鶏飯と酔鯨をお願いします」
ホール担当の女の子に注文を伝え終わり、手に持っていたメニュー表をメニュースタンドに立てかけた。
「あっ! でさぁ、ボディータオル持って帰んの? マジでいらないんだったら頂戴。 今さっき私の、落札されたから。 この分だと梓七のヤツも売れると思うよ」
「―――んで、いくらで落札されたの?」
即座にボディータオルが落札されたことに、驚いた表情を浮かべながら前のめりに姿勢を変えた恵梨。
「1000円」
「―――それって、高いの?」
「・・・・・」
落札された値段を依千歌は言ってみたが、正直“私”は、ネットオークションなどのサイトを利用したことがないので、はっきりその値段が妥当なのかサッパリわからなかった。
たぶん同様に微妙なコメントをした恵梨も、ネットオークションを利用しない側のタイプだと一瞬でわかった。
「うぅうぅん、ごめんっ!! やっぱり持って帰るよ。 折角、戴いたものだし。 お母さんに言って、風呂場に置いてもらうようにするよ・・・」
「えっ? アズのとこって実家だよね?」
「もろ年頃の弟、2人いるって言っていたよね?」
「?! ・・・あ・・・」
実際には見えないけど、3人の間に確実に冷たい風が吹き去ったのを肌で感じ取れたかのように血の気が引いていく音を感じとれた。
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