少年の探すもの

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しばらくして、小さな女の子はお母さんと手を繋ぎ、少年に手を振りながら帰っていった。 そして、また私は少年と二人きりになった。 バツの悪さを感じたのか、少年は帰ろうとした。 「あなたの探しているものは、今はきっと見つからない。過去は戻らないの」 少年は何も言わずに黙ってうつむいた。 私はなんてひどいことを言っているんだろう。 でも、伝えなくてはならない。 「もういない人に会えないのは寂しくて悲しい事だけど、ここであの親子に出会えたように、出会いは未来にあるの。だから、未来を拒む事はしないで欲しい」 「先生に、僕の気持ちはわかるの?」 「もちろんわかるわ。私も父を病気で亡くしているし、時々父に会いたくなる。でも、だからって時は待ってくれなの。振り向いてばかりじゃ、自分が幸せになれないし、父が見ていたらきっと叱られてしまう。だから、大切な人の事は胸にしまって生きていくの。そうして自分の人生を全うできたら、また会いたい人に会える気がするから」 少年は俯き、長い沈黙が流れた。 夕日は沈んでいき、空はだんだんと暗くなっていく。
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