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それからも、スーパー、公園、商店街、病院で少年を見かけ、ある時には私の家の近くにある神社で少年を見かけた。
神社に続く石段の上で、眩しいほどの夕日に照らされながら少年は佇んでいた。
「何をしているの?」
何回、この問いを少年にしただろうか。
少年は私の声に反応して、こちらを向いた。
石段を一歩ずつ上がり、私は少年の隣に立った。
「何かを探しているの?」
「どうして、僕が探してるって知ってるの?」
「聞いたの。あなたの友達から」
「あいつら、おしゃべりだなぁ」
少年は石段の上の鳥居を見上げた。
「この石段をさ、いつも上り下りしてたばあちゃんがいたんだ。何してるの、って聞いたら、足腰を強くするためだって。僕が虫取りに来ると、いつも飴玉くれたんだ。だけど、最近いないんだ」
「その人を探してるの?」
少年は静かに黙った。
「先生、人は死ぬとどこに行っちゃうのかな」
少年は呟くように言った。
「ごめん、先生。何でもない」
そう言って、少年は逃げるように石段を駆け下りていってしまった。
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