少年の探すもの

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「僕を探しているんだ」 「僕? 君はここにいるじゃない」 「探しているのは、今の僕じゃなくて」 「先生、よく意味がわからないよ」 「僕のばあちゃんね、一年前に死んじゃったんだ。病気でね。それからすぐに、母ちゃんが交通事故で死んで。この公園に少し前までいた野良猫も、商店街の煎餅屋の二人も、神社の石段にいたばあちゃんも、病院で仲良くなった兄ちゃんも、みんな、みんないなくなっちゃったんだ」 「だから、あの時、人は死んだらどこにいくか聞いたのね」 「一年前まで、確かにみんないたんだよ。僕の前にいて、時々叱られたりもしたけど、僕のつまらないギャグで笑ってくれたり、話を聞いてくれたり、僕は楽しかったんだ。それに家を出る時や帰った時だって、母ちゃんとばあちゃんがいて、いってらっしゃいとかおかえりとか言ってくれたんだよ。なのに」 少年はただ前を見て感情を抑えようとしていたが、夕日の光で目が潤んでいるのが見えた。 「あの時の僕は、すごく幸せだったんだ。だから、みんながいた時の僕を探して入れ替わって、僕はもう一度みんなに会いたい。ばあちゃんのしわしわな手を握って散歩したり、母ちゃんにいつもありがとうって言いたい。ね、先生。みんながいた時の僕がどこにいるか知らない?」 少年は溢れ出る涙を拭いもせずに、ただただ私の方を見た。 死んだ人には会えないし、過去の自分に会えない。 それが現実。 けれど、私は少年の純粋な気持ちに、どうやって非情な現実を伝えたらいいのかわからなかった。
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