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少年の探すもの
少年の名前は、近藤圭太。
私が赴任してきた時、少年は小学四年生だった。
明るく活発な男の子で、いつも友達と楽しそうに遊んでいて、放課後になるとよく校庭でサッカーをしている姿を、私は音楽室の窓から見かけていた。
その頃は特別気になるわけでもなく、他の生徒と同じだった。
それが六年生になった頃、放課後に一人鉄棒の上に座っている少年の姿をよく見かけるようになった。
少年の視線の先では友達がサッカーをしているというのに、少年はそれに混ざろうとはしなかった。
仲間外れにされているのかと思いきや、廊下や教室で見かける少年の周りには同じ男の子たちがいて仲良く話している。
私は、そんな少年の事を少しずつ気になるようになった。
ある時、少年に『一緒にサッカーをしないの?』と尋ねたけれど、少年は首を横に振って鉄棒からピョンと飛び降りると、「先生、さよなら」と言って、私から逃げるように帰ってしまった。
少年が帰って行く様子を、サッカーをしていた男の子たちは見送っている。
「一緒に遊ばないの?」
そう尋ねると、一人の子が言った。
「なんか、探しものがあるんだって。それを見つめるまでは、放課後遊べないって」
「何を探してるの?」
「知らない。教えてくれないんだ」
そう言うと、その子達もゴール近くに置いてあるランドセルを背負って帰って行った。
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