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小暮は名取のことが苦手だった。
小学生の頃は仲良しで、いつも一緒にいたはずなのに、彼の両親が離婚、再婚を繰り返すうちにその機会は目に見えて減っていった。中学、高校と年齢が上がっていくのに比例して、どんどん攻撃的になっていく彼は、当然のように孤立していく。
小暮は名取のことが苦手だったが、なにも嫌いになったわけではない。
だから小暮は諦めなかった。名取の友達でいることを、決して止めようとはしなかったのだ。
高校を退学処分になった名取の背中を追いかけながら、小暮は叫ぶ。「名取!」その足は、名取の気まぐれに折られたままで、松葉杖がコンクリートにガガガと擦れる。
校門のすぐそばで立ち止まって振り返る名取の両目は、腫れあがった小暮の顔を見ているようで、それとなく空へ逸らされていた。
「よかったな。これでもう不毛なお守りもおしまいだ」
それだけ言うと、口を開きかけた小暮を置き去りにして、名取はさっさとその場をあとにしていた。軽く上げられた右腕が永遠の別れみたいにあっけなく、それでも確かに左右に揺れて、小暮は奥歯を噛みしめる。
殴られても、怒鳴られてもよかった。どれだけ理不尽でなんの理由もなかったとしても、小暮にとって名取は1番の友人であるはずだったのだ。
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