吸殻

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吸殻

名取は潮田に恋をしていた。 高校を退学になり、家に居場所もない彼は、1日のほとんどを隣町のコンビニの前で過ごしていた。それというのも、そのコンビニでバイトをしている女子大生の潮田をガラス越しに眺めるためだ。それ以外に理由はない。 潮田は背が高く、控えめな笑顔が印象的な女性だった。名取は一目で彼女に好意を抱いたが、潮田の方はまったくの逆で、未成年なのに平気な顔で酒や煙草を買いにくる彼に辟易していた。それも潮田の出勤日には毎回だ。 名取もそのことに気がついていた。 けれど他にすることもなかったので、やはり彼は今日も隣町のコンビニに行く。ポケットにねじ込んだスマホに、着信はない。 1人でよかった。1人きりになりたかった。その確信が、ただの強情だと気づくまで、名取はこれを恋と名づけた。
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