ある少年

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夏が来た。 セミの鳴く声を聞いて、そう思った。 昼休みの時間、小学校二年生の健太は、校庭の木に止まるセミを見つめていた。 「健太―何してんだよ!」 一緒に鬼ごっこをしていた友人が駆け寄ってくる。 「蝉って生まれても一週間で死んじゃうんだって」 「知ってるよそんなの。はい次、健太、鬼ね」 と同時に、チャイムの音が鳴った。 「なんだ、つまんねえの」 夏の灼けるような日差しが、校庭に注いでいた。生徒達は校舎に戻っていく。 健太はまだ、命を燃やすように鳴く蝉を見つめていた。
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