10人が本棚に入れています
本棚に追加
夏が来た。
セミの鳴く声を聞いて、そう思った。
昼休みの時間、小学校二年生の健太は、校庭の木に止まるセミを見つめていた。
「健太―何してんだよ!」
一緒に鬼ごっこをしていた友人が駆け寄ってくる。
「蝉って生まれても一週間で死んじゃうんだって」
「知ってるよそんなの。はい次、健太、鬼ね」
と同時に、チャイムの音が鳴った。
「なんだ、つまんねえの」
夏の灼けるような日差しが、校庭に注いでいた。生徒達は校舎に戻っていく。
健太はまだ、命を燃やすように鳴く蝉を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!