ある少年

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「よいしょっと」 健太の母は大きなお腹を抱えながら、干した洗濯物が入ったかごをリビングに持ってきた。 「僕も手伝う!」 クーラーの十分に効いた部屋で、宿題をやっていた健太は言った。 「健ちゃんお兄ちゃんになるんだもんね」 健太の母は出産を二週間後に控えていた。妹が生まれるのか、弟が生まれるのかは内緒だそうだ。 健太は慣れない手つきで洗濯物を畳んでいった。ぐじゃぐじゃに洗濯物を畳んでも、母は健太を褒めてくれた。その母の笑顔が嬉しくて、健太はいくらでも手伝いをしてしまうのだ。しかし今回はそれ以外にも目的はあった。 「お母さん、赤ちゃんってどうやってできるの?」 忙しく動く母と時間を共有するのは、手伝いをするのが一番だった。 「うん?えーと、コウノトリが運んでくるのよ」 母は洗濯物を畳みながら言った。 「お母さんのお腹から生まれてくるのに?それってお母さんから生まれた赤ちゃんを、一回コウノトリに預けて、もう一回もらうってこと?」 健太は言いながら、自分でも何を言っているのか分からなくなっていた。 「・・・まあそんなところ。変なこと、考えないの」 母は他にもやることがあると、リビングを出ていった。何かを隠している、そう思った。 だからこそ健太の頭にはその疑問が強く残ったのだ。 「ちゃんと宿題やりなさい」 母の声が聞こえた。 さすがお母さん、手伝いをすれば宿題をやらなくて済むかと思ったのに。
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