ある少年

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健太の帰り道には古びたホテルがある。駅前の再開発から取り残された、埃をかぶったホテルだった。そして今日はホテルの前に、制服を着た若い女性が、携帯をいじりながら立っていた。 健太はその珍しい女性に目を奪われていた。 「お姉さん、何か落とし物でもしたの?」 制服を着た女性は驚いたように健太を見ると、すぐに陽だまりのように笑った。 「大丈夫、なにも困ってないよ」 よく見ると、目鼻立ちのはっきりした美人な若い女性だった。 なんだかお母さんに似てるなあ。 「僕こそ、どうしたの?」 女性は顔を近づけて言った。 なんだか、妙に甘い匂いがする。 「なんでもない・・・」 顔が赤らんでしまったかもしれない。 「ちゅーしてあげよっか?」 ふざけるように女性は言った。 今度は間違いなく、真っ赤になっていた。 途端、健太は帰り道を走っていた。
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