10人が本棚に入れています
本棚に追加
健太の帰り道には古びたホテルがある。駅前の再開発から取り残された、埃をかぶったホテルだった。そして今日はホテルの前に、制服を着た若い女性が、携帯をいじりながら立っていた。
健太はその珍しい女性に目を奪われていた。
「お姉さん、何か落とし物でもしたの?」
制服を着た女性は驚いたように健太を見ると、すぐに陽だまりのように笑った。
「大丈夫、なにも困ってないよ」
よく見ると、目鼻立ちのはっきりした美人な若い女性だった。
なんだかお母さんに似てるなあ。
「僕こそ、どうしたの?」
女性は顔を近づけて言った。
なんだか、妙に甘い匂いがする。
「なんでもない・・・」
顔が赤らんでしまったかもしれない。
「ちゅーしてあげよっか?」
ふざけるように女性は言った。
今度は間違いなく、真っ赤になっていた。
途端、健太は帰り道を走っていた。
最初のコメントを投稿しよう!