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「それが何か?」
「コトシロもヒトコトヌシも国政に役立つ能力だ。あまり言いたくないが、スサノオもな」
スサノオとオオクニが睨み合い、すぐに視線を外した。
「天上官たちは曖昧な存在に姿形を、意思を、命を与えた。俺たちもそれに乗っ取って生きているわけだが」
「だから何?」
「俺の能力は縁結び、繁栄と言えば聞こえが良いが、ただの見合いの仲介人だ」
イワナガは、自身の見合いの苦い記憶を思い出し、拳を握った。
「イワナガとコノハナの能力はよく知らんが、前に命を助けただろう? 瀕死だった命がみるみる回復するところを、俺は見た」
能力を他には見せられないとし、二人はいつもその中身を隠していた。その断片を見たオオクニは、イワナガとコノハナの能力も国に貢献するものだろう、と言った。
「命を間接的に増やし続ける俺の能力は、業にならんのかねえ」
そう言ったオオクニに、イワナガはあっけらかんと言った。
「私もコノハナも、能力を使ったことは一度もないわよ?」
オオクニは口をあんぐりと開けた。
「いいや。俺は見たぞ! あの時」
オオクニが言いかけた時、奥に下がっていたコノハナが、ヒナではない別の、体格の良い男性と共に現れた。
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