一人と一羽

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一人と一羽

 華やかな灯りが夕方の街を色付けていく。絵の具を撒き散らした世界は、人や動物の声によって活気付く。 「クロ。今日は魚も一杯釣れたし、トマトも茄子も収穫出来たからご馳走だね」  クロと呼ばれた黒兎は、隣に立つ人間の少女と、少女の背負う荷物を渋い目で見て言った。 「俺は人参がいい」 「文句言わないの。ホイル焼きにしよう」 「本当にツキユミは女っ気より食い気だな」  クロの余計な一言で、ツキユミと呼ばれた少女に逆さまに持ち上げられた。必死に謝り下ろしてもらったが、全身の毛は逆立ったままだった。 「ツキユミ。そんなんじゃモテないよ」 ツキユミは鼻で笑った。 「別に構わないよ。クロがいてくれるからね」  クロは照れ臭そうに、後ろ足で地面を蹴った。 「それに、他の人間も動物も嫌いだよ……」  ツキユミは空を見上げた。遠く離れた空は橙と紫が混ざり合い、濃紺に変わり始めていた。  第一次高度文明発達期と呼ばれ、何もなかった天地が開墾された国。種族は人間と鳥獣に分かれるが、見た目の違いこそあれ、食べる物は穀類や魚類、野菜。言語も同じだ。寿命もほぼ同じで百三十年程度。至って平然と、国の中で日常の営みを続けている。     
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