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中央庁
中央庁の最上階にある応接室の椅子に腰を掛け、オオクニは天井を仰いだ。自身の首に下げられた、美しい硝子玉を翳しては溜め息を吐いた。
「何を辛気臭そうにしているのよ。こっちまで嫌な気分になるでしょう?」
「あんたが振り向いてくれないから、こんな状態なんだけど。なあ、アマテ?」
アマテと呼ばれた女は、更に不機嫌な顔になっていった。
「あなたが中央庁の官職を退いてこの三年。こっちは毎日がてんてこまいよ」
アマテは、どうしていなくなるのよ、と呟いた。オオクニは硝子玉を握り、アマテに向き直った。
「俺は適当だからな。ちなみに女も好きだ。先導者には向かない」
アマテはそっぽを向いて言った。
「なら、私のことも適当なのね」
オオクニは立ち上がり、アマテの傍らにしゃがみ込み、その手を取った。
「あんたは特別。でもなあ、あんたの弟が厄介だからなあ。本当は今すぐにも色々と」
「色々と何だ? 早く姉上から離れろ、この色欲男」
オオクニの後ろには、睨み付けるスサノオの姿があった。
「揃った様ね。アメトコ。クニトコと共に大会議室の準備を」
「了解」
アメトコと呼ばれた大鴉は、クニトコと応接室を後にした。
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