週末に張り付いた残滓

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数年前の冬のこと。 それほど金もなく、アルバイトを転々として食いつないでいた俺は、家賃二万三千という格安物件を見つけ躊躇うことなく契約をした。 それまで住んでいたアパートよりも二万以上安く、最寄りの駅まで徒歩十分。 すぐ近くにはコンビニとドラッグストア、そして郵便局もあり条件としても申し分のない部屋だった。 ただ、契約の際に不動産屋から不穏な話を聞かされた。 「実はですね……その、私どもとしても一応告知の義務がありますので、一つだけお伝えしておくことがあるのですが……今回ご契約していただくこちらのお部屋、実は前の住人が事件に巻き込まれておりまして。まぁ、俗に言う事故物件と呼ばれるところなのです」 事件以来、誰も気味悪がって借りてくれない。そんな場所だがそれでも大丈夫かと、担当の不動産屋はばつが悪そうに訊ねてきた。 正直、俺は幽霊だの妖怪なんてものは信じていなかったし、まして呪いや祟りなど迷信だと思っていた人間だったから、この言葉にあっさりと首を縦に振り契約を交わしてしまった。
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