週末に張り付いた残滓

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部屋を出る際、どうせ最後だからと思い不動産屋へこの部屋で過去に何が起きたのか具体的な話を聞かせてくれと頼んだ。 「ああ……これ、あんまり広めないでくださいね」 そう歯切れの悪い口調で前置きをして、不動産屋は俺が半年間過ごした部屋で起きた過去の惨劇を教えてくれた。 俺が住む一年半ほど前まで、この部屋には二十代後半の女性が一人で暮らしていたという。 ある日、その女性は彼氏を部屋へ連れ込んだらしいのだが、どちらかが浮気でもしていたのかその日の夜に喧嘩となり、彼氏が女性を殺害した。 そして彼氏は遺体を処分しごまかそうと、夜中に風呂場で女性を解体していたらしい。 そして、その犯行があったのが週末である金曜の夜。俺があの異臭に悩まされていたのと同じ時間帯だった。 体験した俺自身、未だよくわからない部分があるけれど、あの部屋には何か過去に起きた事件の強烈な念と言うのか、そういうものがこびり付いてしまっているのかもしれないなと思うのです。 週末になると、今でもあの狭い部屋の中に血の臭いが充満しているのかなと、ときどき思い出してしまいます。
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