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作品は、かなり本格的な油彩画になるのだろうし、芽衣の技術なら、もしかすると入選する可能性だってあるかもしれないではないか。そうなら、いや、そうでなくとも、私の部屋で芽衣と私の愛の結晶が生まれる……! これは僥倖どころじゃないぞ!
しかも芽衣とふたりで長い時間を過ごせるのだ。少し身体が痛いぐらい何でもない。
そう考えたら、嬉しくて、私の顔は自然に笑っていた。
「どう? いい? キョー……。ううん。き、清子……さん」
「もちろん良いよ、芽衣。私、一生懸命に手伝うからさ!」
「ありがとう! きっと良い作品になるよ! よーし! 道具を取りに帰らなきゃ」
そういってベッドから出ようとした芽衣を私は抱き寄せ、軽く優しいキスをした。
「モデル料前払い。確かに頂きました」
最高の笑顔で、自分の唇をぺろりと舐めてみせる私に抱き着き、芽衣はいった。
「これじゃ安すぎ。……もういちど、して」
初夏の陽光は明度を増す時間だったかけれど、私は芽衣の言葉に従った。
きっと素晴らしい、私たちの絵が完成することを夢みながら。
泣き虫芽衣は笑顔の芽衣にもどり、また、絵が描けるようになった。
ふたりでがんばろうね、芽衣。
『ふたりのカンバス』 了
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