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雨の日は自販機の下に手を入れるべからす
サア、サアと降る雨は、俺の視界を隠している。
嗚呼、何でこんな日に傘を忘れてしまったのか。
パチ、パチと雨に打たれながら俺は己を責める。
嗚呼、何で俺は傘だけでなくお金も忘れたんだ。
今日は暑くならないと断言したのは誰だったか。
それ故、俺はお金を家に忘れてきたんだろうと。
嗚呼、形容しがたいほどの喉の渇きが俺を襲う。
学校が終わって外に出た途端、雨が降ってきた。
雨が降らないと断言したのはどの気象予報士か。
それ故、俺は傘も合羽も持ってこなかったのだ。
嗚呼、容認しがたいほどの雨が降り始めてきた。
チャリン、とお金が地面に落ちる音が聞こえた。
あれ、今日はお金を家に忘れたはずだったのに。
ラッキーなこともある、俺はそれを迷わず拾う。
雨に濡れたそれを拾い、俺は近い自販機を探す。
……自販機は思いの外俺の近くにあったようだ。
夜道を煌々と照らすそれに近づき、商品を見る。
「……今どき全品100円自販機とか珍しいな」
大抵は100円から、というものだというのに。
俺は数ある商品の中から冷たい烏龍茶を選んだ。
スリットに先程拾ったお金を入れようとし――、
チャリン、チャリン……と自販機の下に落ちた。
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