雨の日は自販機の下に手を入れるべからす

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

雨の日は自販機の下に手を入れるべからす

サア、サアと降る雨は、俺の視界を隠している。 嗚呼、何でこんな日に傘を忘れてしまったのか。 パチ、パチと雨に打たれながら俺は己を責める。 嗚呼、何で俺は傘だけでなくお金も忘れたんだ。 今日は暑くならないと断言したのは誰だったか。 それ故、俺はお金を家に忘れてきたんだろうと。 嗚呼、形容しがたいほどの喉の渇きが俺を襲う。 学校が終わって外に出た途端、雨が降ってきた。 雨が降らないと断言したのはどの気象予報士か。 それ故、俺は傘も合羽も持ってこなかったのだ。 嗚呼、容認しがたいほどの雨が降り始めてきた。 チャリン、とお金が地面に落ちる音が聞こえた。 あれ、今日はお金を家に忘れたはずだったのに。 ラッキーなこともある、俺はそれを迷わず拾う。 雨に濡れたそれを拾い、俺は近い自販機を探す。 ……自販機は思いの外俺の近くにあったようだ。 夜道を煌々と照らすそれに近づき、商品を見る。 「……今どき全品100円自販機とか珍しいな」 大抵は100円から、というものだというのに。 俺は数ある商品の中から冷たい烏龍茶を選んだ。 スリットに先程拾ったお金を入れようとし――、 チャリン、チャリン……と自販機の下に落ちた。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!