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俺は一人、自販機の下を這い蹲って覗き込んだ。
しかし自販機の下は吸い込まれそうなほど暗い。
俺は立ち上がってポケットからスマホを出した。
そしてライトをつけて、自販機の下を照らした。
すると、キラリと光るものを見つけた。お金だ。
俺は再び這い蹲るとそれに思い切り手を伸ばす。
すると、何が俺の手首をグッと、力強く握った。
ひっ、と声にならない声を上げた俺は、悟った。
自販機の下には、誰か、あるいは何かがいると。
俺は思い切り手を引くが何かは一向に離れない。
むしろギリ、ギリ……掴む力が強くなる一方だ。
痛い、痛い、痛い……いたいイタイイタイ……!
指先の感覚と温度が無くなっていくのが分かる。
俺は少しずつ力が抜けて、何かに引っ張られる。
ズル、ズル……俺の体が湿った地と擦れ合って。
その音に引っ張られるように俺の意識も薄れる。
最後にチラリとだが自販機の下の存在が見えた。
それは耳元まで裂けた口を三日月に笑っていた。
それは眼球の落ちた目でこちらを見つめていた。
それは長いバサバサの黒髪を地に散らしていた。
それは――俺の手を掴む何かの手を掴んでいた。
つまり……俺を掴んでいるのはこれではないと。
むしろ、これは俺を助けようとしていると……?
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