雨の日は自販機の下に手を入れるべからす

3/5
前へ
/5ページ
次へ
そう考えたが、しかし俺の意識はもう持たない。 俺は目を閉じ、実にあっけなく意識を手離した。 ピッ、ウィーン……ガタン、チャリンチャリン。 俺は妙な音で目が覚めた。ここは何処だろうか。 目が覚めた時、俺は這い蹲っている体勢だった。 俺は辺りを見回すが、すぐに天井にぶつかった。 ゴツン、と思いの外大きな音が出て結構驚いた。 この部屋、人が住むには些か狭すぎではないか。 そんなことを思いつつ、俺は再び辺りを見回す。 特に変わったものはないが、しかし光源もない。 俺は何故このような変な場所にいるのだろうか。 思い返して見るも、俺は何も思い出せなかった。 まぁいいかと思った俺は再び寝ようと目を閉じ、 「……ダメ、目を閉じたら、死んじゃうかもよ」 とてもか細い、蚊の羽音のような声が聞こえた。 それは鈴のような、波音のような、美しい声だ。 耳元からその声がしたのでそちらをバッと向く。 しかし、予想に反してそこには誰もいなかった。 なんだ幻聴か……俺もきっと疲れているんだな。 改めて俺は目を閉じ、深い深い微睡みに落ちた。 目が覚めないまま、誰にも見つからないままで。 俺はこの日、この時……誰も知らぬまま死んだ。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加