雨の日は自販機の下に手を入れるべからす

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オレは深い微睡みから浮き上がり、目が覚めた。 あぁそうだった、オレは自販機の下にいるんだ。 オレは何かに自販機の下まで引き摺り込まれた。 だから今、オレは自販機の下にいるんだったな。 状況を確認したオレは隣にいる何かを見つめた。 あの時、「俺」を助けようとしてくれた女の子。 この子もきっと「俺」みたいに死んだのだろう。 雨の日に自販機の下に手を入れてしまったから。 今はこの狭い自販機の中に14人が蠢いている。 小さいものから大きいものまで実に多種多様だ。 それらは皆、新しい住民を引き込もうと必死だ。 ――そして、ひとりまたひとりと住民が増える。 嗚呼、ちょうど今は雨が降っているではないか。 チャリン、チャリンと転がる硬貨に目もくれず。 オレは一心に、差し込まれた手をグッと掴んだ。 それをグッと引き摺り込むと、オレは顔を見た。     
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