シュークリーム

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 真っ暗な空間で佇んでいた僕は、ただ何となく自分の指にかぶりついた。理由ははない、無意識による行動だった。するとどうだろう、口の中いっぱいに食べなれた愛すべき味が広がるではないか。自分の指ということを忘れて?みちぎった。柔らかい。  流れるのは血ではなくカスタードだ、あるのは皮膚ではなくキャベツの名を冠する皮だ、支えるのは骨ではなく散りばめられたバニラビーンズだ。  人差し指から小指までを食い尽くすと、服を脱ぎ捨てた。無事な手で体を確認すると、全身が触りなれたシュークリームの感触がした。   僕は歓喜と恐怖、欲望に取り憑かれ手当たり次第に食べ進めた。自分自身が愛すべきモノになった歓喜と、このまま全部食べたらどうなってしまうのかという恐怖。そしてそんな考えはどうでもいい、虫歯に侵された歯のように思考は溶かされ、欲望のまま体にかぶりついた。  手は残した。変なところで冷静なのか、口が届かない場所を考慮してだった。足首を引きちぎり、へそを抉り、カスタードが詰まった頭を引きちぎった。  どれほど食べ進めても痛みを感じなかったのに、すでに無くなっている脳天を貫くような衝撃が走った。僕の至福の時間は終わり、最悪な起こされ方で目覚めた。  目が覚めた僕は、夢の終わりに頭を抱えた。二度寝をしようかと思ったが、薬が切れて眠れる気がしない。朝から絶望感に苛む。     
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