シュークリーム

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 ふと、自分の手を見た。皮に筋肉やら血管やらが詰まった、シュークリームというよりソーセージと表現した方がいいものを、じっと見つめる。  そこからは無意識だった。まずペロリと舐めてみる。なんだか甘い気がした。日ごろから手づかみでシュークリームを食べてるからだろうか。何度か舐めて、気のせいレベルの甘さを確かめる。  下を絡ませるのを止め、歯で挟み込み顎に思い切り力を加える。中々噛み切れない。布団が血で汚れるし痛いが、普段の嫌になる痛みよりマシだと思えた。筋肉や脂肪を削り、血管をちぎり、骨に到達する。硬いが、僕の情けない歯と顎が頑張ってくれた。口の中で鈍い音がして、肉団子より質量があるものが転がる。  甘くない、けど甘い気がする。甘味を求めて夢を再現する。  僕の中で痛みと共に幸福感が溢れてきた。  僕が僕の中に溜まっていくたびに、僕が抜けていった。だんだん思考が鈍り、本当に甘く感じてきて、甘い肉を食らった。いや、肉ではない、これはシュークリームだ。久しびりのシュークリームを食べているんだ。人型のシュークリームを食べたのは人類史上僕が初めてだろう、光栄だ。  甘ったるい終わりに近づきながら、僕は最後にこう思った。  ああ、これで虫歯に悩まずに済む。  
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