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さっき来た人たちが浴槽に入ってくる前に、身体を設置されていた石鹸を使って、極力”アソコ”を見ないように颯爽と洗おうとした。
「あっ!」
だけど急いでしまうあまり、取ろうとした手先から石鹸は滑らかに滑っていき、手の届かない先に行ってしまった。
仕方なく他の石鹸を使って洗おうとしたところで、背後からガララララとガラス扉が開く音がした。
音に反応してしまい、不意に扉の方へと視線を向けてしまった。
「うっぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
「!!?? ゆ……勇者殿……?」
自分でもビックリするぐらい変な声を上げてしまった事で、宿利用者の男性――フルジュさんは驚きに固まってしまった。
フルジュさんはタオルを持たずに全裸でその場所に立ちつくし、腰にタオルを巻いていない状態だった為、見たくもないぶら下がる逞しいナニかを目の当たりにしてしまった。
「フルジュ! ここは男女一緒の混浴ですよ!! その汚らしいものをしまいなさい!!」
――パッカーン!
「ウゴッ!? お……おぉぉ……う」
女性の高い声とどこかを硬化のもので叩いたような効果音が響き、唸るフルジュさんの声に私はハッとして女性の方を見た。
その方向には身体のシュルエットを隠すように胸から太ももにかけてのバスタオルを巻き、長いストレートな髪を三つ編みが組み込まれた一つのお団子にまとめたセリシアさんが桶を手に持って、ふるふると憤っていた。
「さあ! 早く! これから他の人も来るのですから、腰布を巻きなさい!」
「お、おぉ……すまん……」
「あ……あの……」
手渡されたタオルを腰に巻き始めたフルジュさんをよそに、私はセリシアさんに声をかけてしまった。
声に気が付いたセリシアさんは私の方を見兼ねると、腰を折って発育のいい胸がタオル上に揺れて見えた。
「勇者様ごめんなさい。フルジュが同性とはいえ見苦しいものを見せてしまいましたね」
「あ――いえ……」
セリシアさんの言葉で思い出したけれど、私の身体はこの世界の名前の知らない勇者……男の身体で、意識自身は彼女と同じ女性ではあるのに、作りが男性そのものであって、私は私ではないのだということ。
そして本来であれば私は異性として……この身体の本当の持ち主がどんな喋り方であるのかわからないけれど、男性として、勇者として振る舞わなければならないのだと――……。
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