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第六話 妖精?登場 ~世界についてとこれからの事~
『……! ぉーー……い! おい! 起きろ!』
遠くから声が聞こえてきていたけれど、瞼が開かないおかげで、声の主を確認することが出来ない。
今でもなお、私を起こそうと揺さぶり動かしているけれど、誰がそんなことをしているのか見当もつかないし、瞼は重くまだ開くこともない。
だから揺り動かしてくる人物を無視して、私は肩まで被っている毛布を手繰りで寄せてから顔まで覆う。
自分の体温で温められていた布団の温もりがなぜか嬉しくて、温かい気持ちになったのは数秒のみで――……、
『おい! いい加減起きろよ!』
一際大きな声が聞こえたかと思えば、被ったばかりの温かい布団が勢いよく退けられ、室内に籠もっていた冷たい空気が身体全体を包み込んだのだった。
「もー……なによぉ……」
寒さのおかげで身体を渋々に起こしながら、逆に開けることのできない目元のつきものを取るために擦ってぼやく。
『やあぁぁぁっと起きたか……このドロボウめ!』
「はぁ!? ドロボウ!? 乙女の寝室にいる奴には言われたくないんですけど!」
起き掛けの耳に、呆れと怒りを含んだ声にとっさに反発した。
だけどそれ以上に対抗するように発せられた内容に、衝撃と納得するような言葉が耳に入った。
『その身体は俺のだ! そもそも乙女の身体とは程遠いだろうが! それに人の身体を乗っといておいて、ドロボウじゃないなら、お前はいったいなんなんだ!?』
「……はい?」
寝耳に水とはこのことだと思いながら、はっきりしてきた視界に、窓から差し込む朝の光に照らされて、煩く吠える小さい男子が羽根のようなものを震わせて目の前に浮かんでいたのだった――。
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