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第四話 宿について
「勇者様! なんですか! あのへっぽこ具合は!」
「あ、あはは……」
「らしく……ない」
「情けない……」
「ですわ」
「うっ……ごめんなさい……」
闘牛氏は優秀な仲間のおかげでゲームさながらに消滅して、戦闘終了のファンファーレが鳴り響いている。
そんな中、私は敵が倒れた際に落としたコインと素材が目の前に積まれているのに、シスターに正座させられているため、視線も感情も送れず顔に汗が噴き出していた。
それにソフィーさんやアンディアちゃん、フルジュさんに何故か呆れられている現状に陥っていた。
「まさか、私たちを射止めた勇者様が、へっぽこに初心者丸出しで、戦闘もできないとはいったいどうされたのですか!?」
――そんなこと言われても、初心者ですし!?
心の中でシスターの言葉に突っ込むけれど現実はそういかず、シスターに浴びせられる言葉にグサグサと突き刺さる図星に痛めながらも、言い訳ができるわけでもなく、頭を垂れるしかできなかった。
それにしても、シスターの云うことは理に叶っていて、気が付いたらこの世界に居て、勇者様と言われてしまって困惑しちゃったとはいえ、心と体が追いつかないまま戦闘してしまったのは情けないこの上なかった。
「まあ、まあ、セリシアさん。勇者は反省しているようだし、それくらいにして……」
「ゆうしゃさま……かわいそう……」
シスターと私の間にフルジュさんはシスター――セリシアさんを落ち着かせるようにして、アンディアちゃんは、頭を垂れ続ける私の頭を優しく撫でてくれた。
それと同時に、やっとシスターの名前が判明したことに心の中で安堵し、名前をそれぞれ言えることに嬉しく感じた。
「……それも、そうですね。今日は疲れているんですよ。ごめんなさい、勇者様……」
「そ……そうです! セリシアさんの言う通り、今日は疲れちゃったんです! 明日には回復してますから!」
セリシアさんの言葉に賛同しつつ反省をしたことで、説教時間は終了した。
「では、そろそろ落とされた素材を回収しません? 消えてしまわれないうちに」
「そうですね。ソフィーさんよろしくお願いいたします」
「えぇ」
そして、ソフィーさんの魔法で出したかばんにずっと放置されていた戦利品を入れ、コインは麻袋に収めた。
それから私たちは再出発した。
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