その三

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 ゴールデンウィークが終わり、僕らは正式にサッカー部へ入部した。  石井君は中学で陸上の短距離走の選手だったことが判明して、サッカー経験はあまりないけどガタイがいいのに走れると期待の新人扱い。大人しく陸上に入ればよかったのに。僕は再び心の中でチッと舌打ちした。  石井君は高野君と同じくらい背も高い。まぁ、高野君の方が百万倍カッコイイのは言うまでもないけど。高野君が白馬に乗った王子でチャンピオンでキングでスーパーアイドルなら、石井君はその馬を引っ張る護衛かSPだ。  そして僕は予定通りマネージャーになった。三年生の桜川ユリ先輩について、残念だけど高野君とは離れた位置でひたすら高野君を鑑賞する。  サッカーしてる高野君は、まるで水を得た魚のよう。ボールと足が磁石でくっついてるみたいに華麗にボールを操る。二年生や三年生とのパス回しも全然余裕。リフティングの上手さに先輩たちからも「すげぇ」の声が漏れる。だてに小学生の頃からサッカーしてたわけじゃない。期待の新人どころか夏の大会が終わったあとの新チームではレギュラーメンバー入りが内々で確定している。桜川先輩情報だから、確かだ。  マネージャーの仕事は、中学の頃の経験もあり僕も即戦力で仕事を任せられると桜川先輩が頭を撫でてくれる。「ありがとうございます」とニコニコ笑顔で返しながら、この手が高野君の手だったらなぁ~と想いを馳せた。  二年生にマネージャーはいない。だから、桜川先輩が卒業してしまえば、僕一人。高野君を存分に眺めていられるのも今のうちかもしれないと、僕は一層、高野君ウォッチに精を出した。
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