その三

3/4
741人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 クラス、部活動と学校生活にも慣れてきた頃、クラス内が俄かに色めき立つようになった。  きっかけは隣のクラスの可愛いと評判らしい女子と、僕と同じクラスの男子、瀬戸君が付き合い始めたこと。朝は教室の前で立ち話。「バイバイ」と手を振り合い、教室へ入ると瀬戸君はからかわれてニヤニヤ。それを見て他の男子は「俺も彼女ほしい~」と騒ぎ、女子は女子で瀬戸君に彼女ができたことで敷居が下がったのか、やたら瀬戸君に話しかけだした。もともと瀬戸君は男女問わず気さくに会話する爽やか系のバスケ部らしいし。  そんなわけで、学年のイケメン偏差値が圧倒的に高いのは、うちのクラス。その偏差値を上げているのは、言うまでもないけど高野君(と瀬戸君)だ。高野君はカッコイイ。それは僕だけが思ってる事じゃなく、悔しいことに誰が見てもカッコイイのだ。  当の本人は、今のところ色恋沙汰に全く興味を示してない。高野君はサッカーに一筋だし、朝練から全力で取り組むから、授業中は眠ってることも多い。昼休みは僕や石井君といるから女子とあまり絡まない。なので、高野君は女子たちにとってまだまだ敷居が高い。  さすが高野君。来たる夏の大会後にある新人戦でレギュラーに入りたいとメラメラゴウゴウ燃えている。サッカー部の一年にとって当たり前だけど最初の目標だし、それしか目に入ってない感じ。本当は決まっているんだけどね。桜川先輩とも約束してるし、高野君を全力でサポートする僕がもちろんそれを言うはずもない。    とにかくだ。瀬戸君が巻き起こした恋愛ブーム。そんなもの僕はどうでもいいんだけど、そうも言ってられなくなってきた。世間には石井君派もチラホラいるらしいが、そっちは好きにしてくれていい。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!