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三人で歩いてると、女子の視線が二人に向けられてるのがよくわかる。だから僕は、最近高野君を壁側へ追いやろう作戦を決行し、更に石井君が盾になるように気を使って歩いてる。
「あー、腹減ったなぁ」
スッと前に出る、石井君のシャツを掴み引き寄せる。
「うお、なんだよ」
「歩くの早すぎるよ」
「ああ?」
全く何も知らない呑気者はこれだから困る。僕の身長じゃ、高野君フェイスがガラ空きで意味がないんだってば。万が一、高野君のあのキラキラスマイルを女子に見られてしまっては大変だというのに。しっかり盾になってくれないと。
「並木って石井と仲いいよな」
高野君が呑気な声を出した。
ん!? 僕は一目散に振り返った。
「な、なんで? ……いきなり」
「並木って動きが女子みたいで可愛いよな」
高野君と話してるのに、石井君がちょっとデレた顔で言う。石井君に言われたって嬉しくともなんともない。それより何より、高野君だよ!
「へ、へん?」
高野君の顔色を伺いながら尋ねると、高野君はキョトンとした表情になった。
「変じゃないよ。女子みたいとは思わないけど、並木はそのままでオッケー」
「高野君……」
朝霧のように立ち込めていた胸の内のモヤに、一陣の風が吹き抜けスーッと晴れていく。
オッケー! オッケーいただきましたっ! これからも堂々と高野君一筋で行かせていただきますっ!
拳を高らかに掲げ、天に誓う。
もちろん心の中で。
もうそっからは、僕の視線は一層高野君へ向き、持ってる笑顔全てを余すことなく高野君へ献上した。
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