みみちゃん

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 と、贈り物のお礼の電話で、母は言った。  子は、カラフルな箱に入った新しい玩具に釘付けになり、「みみちゃん、みみちゃん」とはしゃいで、人形を抱っこした。  「いいこいいこしてあげてね」と言うと、人形を抱っこして頭をなでたりした。  薄いキャミソール一枚のみみちゃんはいかにも寒々しく、早く服を買ってあげたいと、わたしは思った。  子には「みみちゃん大事にしてね」「かわいかわいしてあげてね」と言い聞かせ、みみちゃんを可愛がっている様子を見かけるたびに、子をぎゅっとしたり、撫でたりして褒めた。  だけど、やっぱり子は他のものに気を取られ、そのたびに抱っこしていたみみちゃんを落としたり、転がっているみみちゃんを蹴っ飛ばしたりした。  「あっ、みみちゃんがかわいそう」  と、わたしはその都度はらはらし、どうして自分はこんなに神経質になっているんだろうと可笑しくも思った。  どういうわけだか、みみちゃんがごとんと床に落とされたり、踏まれたりした瞬間、どきんと心臓が跳ね上がるのである。     
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