みみちゃん

5/8
前へ
/8ページ
次へ
 ワンピースやら、パジャマやら、色々な服が売られている中、うちのみみちゃんにはこれがいい、あったかにしたほうがいいし、女の子らしいものがいいし、と考えて、ボレロ付きのスカートセットを買ったのだった。  帰宅してみみちゃんに着せて、ほらこんなに可愛くなったし、もう寒くないよ、と心から安堵した。  その瞬間、心のどこかでずっと沈んでいた違和感が、ひょこっとはっきり、浮いてきたのだった。  (子のために人形の服を買ったんじゃなくて、みみちゃんのために服を買った……)  保育園から子が戻って、ほらみみちゃん、ちゃんとお洋服きたよと見せた。  子は珍しそうにみみちゃんを触っていたが、どういうわけか、その日からほとんどみみちゃんを抱っこしなくなったのである。  「みみちゃんと遊んであげてね、可愛がってあげてね」  と、お願いする度に、抱っこしていいこいいこしてくれるのだけど、すぐに元あったクッションの上に戻し、自分は離れたところで別の遊びを始めるのだった。  (飽きたのかな)  と、わたしは思い、なぜかちょっとほっとしていた。  飽きたのなら、もう子がみみちゃんを取り落としたり、さかさにしたりすることはないだろう。  ……。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加