みみちゃん

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 なんで叱られたのかわからないという表情で――だけどなんとなく理解して――しゅんとするかわりに、ぷんとむくれて離れて行ってしまったのだった。  (ふん。ママなんか嫌い。あたしのことなんて、可愛くないんでしょ)  子の小さな背中が、そう語っているように思え、わたしはみみちゃんを抱っこしたまま、ふっと微笑んでしまった。  「ゆうちゃん」と、子の名前を読んで、ぎゅっと抱っこしようとしたら、子は一人前の顔をして「やっ」と怒り、手を跳ねのけたのである。  ……。  みみちゃんをクッションに寝かせてから台所に戻ると、フライパンが焦げた匂いをまき散らしていて、慌ててガスコンロの火を止めた。  ふわんと香ばしい匂いが立った。  残り物のご飯でチャーハンを作ったのだが……わたしは瞬間的にこみあげてくるものに驚愕し、体を丸め、口を押えながら、洗面台に向かったのである。     
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