みみちゃん

　じんわりと、下腹部に重たいだるさがある。

　それは、ここ数日続いており、しかも今月は、まだ生理が来ていない。

　「ママ」

　あどけない声が聞こえたような気がして、しつこく纏わりつく倦怠感や吐き気と戦いながら、わたしは目を閉じた。

　子の声と似ているけれど、全く別の声が。

　（まさか、いやでも……ああ、そうなのか……）

　子供番組が流れている温かで明るい居間を覗いた。

　子は、むくれたまま一人で絵本を開いている。

　少し離れたところで、みみちゃんは静かに目を閉じて、クッションの上でねんねしているのだった。

　「ゆうちゃん、みみちゃんと仲良くしてあげてね」

　わたしの声が聞こえているのか、聞こえないふりをしているのか。

　イヤイヤ期に入りかけている子は、頑として振り向かず、ママの言う事なんて知らないよと宣言するかのように、黙々と絵本をめくり続けているのだった。