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サリー先輩はコホンと咳払いした。
「百万飛んで一回目の説明です。質問は後ほど受けつけます」
「ん、んー」と喉を整える。
声色が変わり、言葉遣いも形式的なものに変わった。
「私たち、死神の目的は大別して二つです。それを話す前に私たちの境遇について話さなければなりません。私たち死神は、ある日突然、閉じたモノクロの世界に生まれます。歳頃は、十四、十五の少女の姿で、過去の記憶は一切ありません。歳を取ることはありませんが、お腹がすくと餓死します。この世界には、そういう境遇の死神がたくさん暮らしています。出口はなく、生きていく方法はたった一つです。それが電話をかけることです。
私たちの目的の話に戻ります。二つの目的の一つ目は、食べものを手に入れることです。わたしたち死神は電話をかけることによってしか、食べものを得ることができません。不合理で説明のつかないことですが、電話は今まさに死のうとしている方につながり、その方の死を看取ることで、食べものが支給されます。このことが、わたしたちが、『死神ダイヤル』と呼ばれ、また自称することのいわれです。
目的の二つ目は、外の情報を集めることです。このことで、私たちはこの世界からの脱出、あるいは救出される方法を探しています。今のところ、この場所がどこにあって、なんのために存在するのか、自分たちが何者なのか。核心に至るまでのことは何一つわかっていません。以上、わたしたちの目的についてです」
静寂があった。続きを待ったが、先はなかった。
「なるほどな」
「お、寝ないで聞いてたな。えらい、えらい」
サリー先輩は無理やり茶化しているようだった。
呪われた境遇をできるだけ忘れていられるように。
「はっきり言って、ちょう眠い」
「で、感想は?」
「自分が何者なのかも知らないなんて……」
「君に言われたくないなあ」
「つまらん人生だ」
「君は自分が何者か知っているのかい?」
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