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「なにが?」
「気づいてねえのか? 本当に間抜けな奴らだな」
「これから自殺しようって君に言われたくないな」
「え! 自殺? や、やめて。考え直してください」
「ウチらは死神なんだぜ?」
サリー先輩は静かに言う。その言葉の重苦しさに閉口する。
わたしは死神になったらしい。実感はぜんぜんないのだが。
「自殺しようとしてるって、よくわかったな」
シュッと擦りつける音。わたしはマッチを想起した。
火薬の匂いさえも感じる。共感覚というやつだろう。
「それに電話してきたってことは、やっぱ気づいたんだろ」
「君がなにを言ってるか、さっぱりだよ」
「とぼけちゃって……」
微かにパチパチと弾ける音。
「今、練炭に火を点けた」
「知ってる。あと二十分で君が死ぬことも知ってる。死神だから」
その言葉に、わたしは違和感を覚えた。どうしてそう感じたのか、自分の頭のなかを探る。答えはすぐに出た。二十分という時間だ。そんな短い時間で死ぬには彼は元気すぎるのだ。
「ああ、俺は死ぬ。でも一人じゃ死なねえ。お前らも道連れだ」
電話越しであるのに、その言葉には迫力があった。
わたしは怖気づいてしまう。
「許してください!」
「もう遅い」
サリー先輩は態度を崩さず、不敵だった。
「ねえ、死神を殺せるもんなら、殺してみてよ」
「だめっ! お願いします。許してください」
「遅いんだよ。お前ら、もう死んでんだよ」
「わたし、もう死んでる !?」
「生きてるけど?」
「どっち !?」
男はずっと勿体つけていたが、とうとう言った。それも渋々という感じでだ。
「データを盗んだんだ」
「……データ?」
「会社の顧客データだ」
「ああ」
「わかったか?」
「まーね」
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