タナちゃんとサリー先輩 Ⅰ

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 男は「そうだ、そうだ」としばらく独りごちる。  次の言葉には、それまであった怒りが消えていた。 「ああ、確かに、おかしいもんな」 「ね」 「お前みたいな声のやついねえし、よく考えたら、タナカはオッサンだったし」  わたしは今日、二度目のショックを受けた。 「あの、わたし、男みたいな声ですか?」 「かわいい声だって言っただろ」 「嬉しくないです!」 「おい!」  男の笑いは乾いていた。 「ハハハ……死神ね。じゃあ、お迎えに来てくれるわけだ」 「ふーん。あんたの死神はそういうタイプなんだ」 「ああ、大鎌持って黒いローブを被った白い骨の化物だ」 「それ、恐くない?」 「恐えよ」 「そんなのにお迎えに来てほしいの?」 「やだよ。お前ら、そんな姿なのか?」 「タナちゃんは美少女だけど」 「なら歓迎だ」 「えぇー」  わたしは質問しないわけにはいかなかった。わからないことだらけだ。 「もしかして、わたしたち、行くんですか?」 「もちろん、行かない」 「良かった。びっくりしました」 「じゃあ、この電話はなんだ。アポイントじゃねーの」 「残念、ウチらは電話をかけるだけ」 「なんだそれ、それになんの意味があんだよ」  そこも聞いておきたいところだった。この仕事の意味はなんなのか。耳を澄ませてから、このパターンはろくな答えが聞けないパターンだと気づく。さっきも優しい言葉を期待したのに、出てきたのはダメ犬という暴言だった。  サリー先輩は高らかに答える。 「知らない」  予知していたのに、わたしはずっこけた。
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