タナちゃんとサリー先輩 Ⅰ

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「逆に知ってたら、教えてくれない?」 「知るわけねえだろ。いい加減にしろ」 「じゃあさ、神様について、なにか知らない?」 「神? それなら一つだけ、教えてやるよ」  男は咳き込んだ。さっきよりも切羽詰った感じ。唸りもした。  痛々しく、血が出そうだ。苦しみは演技ではないとわかる。 「……神なんか存在しない」 「ああ、あんたはそのタイプなのね」 「死神のタイプとか、神のタイプとか、どうでもいい」 「一応、聞くことになってるんだ」 「俺もデータの一つってわけか」 「そうなるね」  サリー先輩は指をぱちんと鳴らした。 「あ、そうそう」 「なんだ?」 「もう一つ聞いておきたいことがあったんだよ」 「答える義理はねーな」 「いーじゃん、最後なんだし」 「なら、先に一つ答えろ」 「いいよ」 「お前らの得はなんだ? この電話で受けられる報酬だ」 「あー」 「なんか得があるから、こんなことをしているはずだ」 「それね」 「冥土の土産だ。聞かせろ」  サリー先輩は受話器を口から遠ざけた。天に長い息を吐く。くちびるをぶるぶる震わせた。品のない仕草だけど、わたしはドキドキしてしまう。惚れっぽいのかもしれない。いや、他に頼れる人がいないから無理もないのだ。そう自分に言い聞かせた。 「この話はもう百万回はしてるからなあ」 「嘘つけ」 「死神の寿命なめないでよね。だから、冥土でもありふれた話かもよ」 「じゃあ、いいよ、どうでも、話さなくて」 「あ、そう?」 「俺も答えないだけだ」  わたしは口を挟んでしまう。 「わたし、知りたいです」 「ほら、タナカも知りたいんだと」  サリー先輩はわたしを向く。くちびるを突き出して見せる。 「本当に知りたい?」  わたしは首肯した。 「だよね。愚問だった」  サリー先輩はくうに向き直る。 「じゃあ、話すけど、絶対、笑わないこと、黙って聞くこと」 「ああ、約束する」 「タナちゃんもだよ」 「わかりました」
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