第零話 幕開け

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 広いメインルームに、殺伐とした機械音が響いていた。この閉鎖的な空間は白一色であり、全くと言っていいほど面白みに欠けている。  俺はいつものように、選別された電子メールを確認する。幾度となくやった作業であり、不自然な情報を見逃すことはない。  毎日、”テロリズム”、”ダビディアン教団”、そして” ”9 11” などといった有害なキーワードを見ていると、つくづくこの世の中はおっかないな、と思う。  そして、この仕事にはきりがない。どれだけ多くの情報を確認しても、また、沢山の情報が押し寄せてくる。そこがこの仕事の面白みだ、という者もいるのだが、俺はそうは思わない。  この仕事に就いてからというもの、システムエンジニアの凄さを、肌で感じるようになった。コンピューターの性能を高めてくれ、我々の仕事を楽にしてくれるからだ。  ただし、選別できる情報の精度は上がっても、全体としての犯罪の件数は変わらない。そのため、仕事の量も雀の涙ほどにしか変わりがないのだが・・・
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