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私の父は、殺された。 あれは、私が十の年の頃だった。 私の父は城で若君の傅役(もりやく・お世話係)として勤めていた。 我が父ながら、仕事に真面目で熱心な人だった。 休みの日でも暇さえあれば登城したし、若に何かあれば家に帰ってこない時もあった。 そんな真面目が取り柄の父だから、きっと若君の傅役なんて大役に抜擢されたのだろうと私は思う。 しかし父は仕事一辺倒というわけでもなかった。 体の弱い母が体調を崩せば、父は仕事の後でも母を付きっきりで看病をした。 一人娘の私を可愛がってくれて、いつも遊び相手をしてくれたし、色んなところを一緒に散歩したりした。 「何でも、人の立場になって考えなさい。自分がどうしてもらえたら嬉しいか、どうされたら悲しいのか。 自分がしてもらって嬉しいことはどんな事でも人にしてあげなさい。 逆に自分がされて悲しいことは決して人にやってはいけないよ。 どうしたら相手が喜ぶのか。 それを考えながら生きれば、きっと全て上手くいくよ」 それが父の口癖だった。 とても真面目で、優しくて、時に厳しくて。なにより家族思いの父が私は大好きだった。
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